2020/02/28

Mika meets Benoît Nihant 1/2
ゲスト:ブノワ・ニアンさん




BENOIT NIHANT〈ブノワ・ニアン〉
CHOCOLAT DE DOMAINE



経緯はのちに説明しますが、ベルギー人ショコラティエのブノワ・ニアンさんとテレビ電話でお話をすることになりました。 

チョコレート、とりわけカカオの話になると、ニアンさんはあふれんばかりの情熱から、一段と雄弁になり興味深い話が次々と展開していくので、時間が経つのもすっかり忘れてしまうほどでした。 


【画像上】BENOIT NIHANT〈ブノワ・ニアン〉のコレクション:ボンボン ショコラのアソート、タブレット、ミニショコラセット



情熱を込めてカカオについて語るブノワ・ニアンさん



カカオとチョコレートの職人

ニアンさんは自分のことを“カカオとチョコレートの職人” と名乗っていますが、それは厳選したカカオ豆から手がけるチョコレート職人だということをわかってもらうためだそうです。“ショコラティエ(チョコレート職人)”は広義に解釈すると、カカオ豆からチョコレートを作るビーントゥバー職人だけでなく、出来合いの業務用チョコレートから加工をしている人も含まれるからです。そこであえて“カカオ職人”を加えたのだと言います。 

さらにチョコレート作りに使うカカオ豆にはこだわりがあります。旧知の仲の家族経営のカカオ農園で育てられた希少価値の高い単一農園の単一品種で、豆をブレンドすることはないそうです。カカオの発酵や乾燥といった工程にも注意を払っていて、豆を求めて自らカカオのドメーヌにも出かけます。それがブランド名ブノワ・ニアンの後に“ショコラ・ド・ドメーヌ”と表記している理由でした。 


BENOIT NIHANT〈ブノワ・ニアン〉のチョコレート、そしてカカオについて、ニアンさんがとっておきのエピソードを語ってくれました。 このエピソードは、次のページで >>



ボンボンショコラの一部





 ボンボンショコラについて 

「私たちはカカオ豆を板チョコレートにするだけでなく、ボンボンショコラまで作っています。ボンボンショコラを作るために開発された製菓チョコレートとは違って、カカオ豆から作ったチョコレートでボンボンショコラを作ることは難しいことです。 

でも私たちはかつてショコラティエが、カカオ豆からボンボンショコラまで一貫して手がけていた時代のように、すべて天然食材を使って、オートクチュールのようなアプローチで、とても繊細で高品質のショコラを仕上げる術を得ることができました。 

例えばミント風味のショコラは、天然のアロマを出すために、生クリームに市場から持ってきたばかりのフレッシュミントを入れて煮出したものを、自家製チョコレートに合わせてガナッシュを作っています。こんな風に私たちは、すべてのショコラに本物の味を出しているのです」。 

実際に味わってみるとニアンさんが言うように、確かにフレッシュな素材の風味が口の中いっぱいに広がります。



フレッシュミントの葉を使用した自慢のショコラMenthe


 異業種から脱サラをしてチョコレートの世界へ 

大学卒業後に内定していた企業に就職して、幸せな日々を過ごしていたニアンさんに転機が訪れたのは30歳の時でした。それまで何千人もの従業員を抱える企業のプロジェクトリーダーとして働いていたのですが、チョコレートに対する情熱が芽生えて、現在のように自分で生み出す仕事がしたくなったそうです。

 「2007年に最初のお店をオープンした時、目標としたのはベルギーで一番になることでした。その3年ほど前に両親宅のガレージで最初のレシピを完成させ、それをミシュランの星付きシェフに持って行きました。単に意見を求めるつもりだったのですが、初めての注文を受けることになりました。ベルギーには数百人ものショコラティエがいるというのに、著名なシェフが直接注文をくれるなんてラッキーなことでしたよ」。 


 古い機械との出逢い 

こうして幸運なスタートを切ったニアンさんでしたが、当時ビーントゥバー用の小型機械を見つけることは難しかったそうです。苦肉の策で使うことになった古い機械は、結果的には良い仕事をしてくれることになり、今では〈ブノワ・ニアン〉のチョコレートの味に個性を加えてくれていると言います。 

それは〈ブノワ・ニアン〉のチョコレートの特徴の一つ、72時間というコンチング(チョコレートをなめらかに仕上げる作業)時間にも表れています。 

「コンチング時間が長いのは19世紀に作られた古い機械を使っているからです。粉砕と撹拌の二つの機能を備えていて、カカオ豆を粉砕しながら同時に雑味を取り除くことができます。空気を取り込みながらコンチングするという旧式の機械です。 

どこで見つけたと思いますか? ギリシャにある企業のエントランスホールに飾ってありました。これをパーツに分解してベルギーに持ち帰り、また組み立て直したのです。高温になりすぎることがないので、カカオ豆本来の香りを失うことなく、とても繊細で魅力的なアロマに仕上がることが使ってみてわかりました」



電話によるブノワ・ニアンさんへのインタビューの様子



 新たなチョコレートの誕生… 

最近では日本に何度も訪れる内に、ニアンさんは日本のガストロノミー(美食を含む食文化)にとりわけ興味を持つようになり、日本のエッセンスを入れたレシピを考案中だそうです。昨年には京都の茶畑やお茶工場も視察したといいますから、日本食材を使ったチョコレートが登場する日も近いかもしれません。 

またこの仕事を始めてから自分の農園を持つことを夢見てきたニアンさんは、5年ほど前にペルー政府が保障する長期の定期借地権を得て、ペルーのカカオ農園を共同経営することになりました。チョコレートを作れるのは、まだしばらく先のことになるとのことですが栽培しているのは希少な在来種ということなので、今から楽しみです。 

「私にとってカカオはただの素材ではありません。私が使っているカカオには、それが育まれる土地への旅、人との出逢い、そして生産者との間の物語があるのです。そんなカカオからできるチョコレートは、私にとってはお菓子という枠を遥かに超えた偉大な存在です。この情熱をこれからもより多くのみなさんと分かち合いたいと思っています」。

 ニアンさんはそう力強く言葉を結んでくれました。 



※ 次のページでは、BENOIT NIHANT〈ブノワ・ニアン〉のチョコレート、そしてカカオについて、ニアンさんがとっておきのエピソードを語ってくれました。



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後記

昨年ブノワ・ニアンさんは日本企業とパートナーシップを結ぶことになりました。立ち上げに関わっていた旧くからの知人から、ニアンさんとお話する機会を幾度となく提案していただいたのですが、残念ながら海外出張などで日程の折り合いがつかないまま年を越してしまいました。

今回バレンタイン時期に合わせて来日したニアンさんと、ようやくテレビ電話によるインタビューが実現しました。ご本人から説明をしていただき、実際に食べる比べたことで、カカオ豆の品種や作る工程などによって全く異なることも実感できました。〈ブノワ・ニアン〉のチョコレートには、タブレットとミニチョコの2つのタイプがあるので、みなさんも是非食べ比べてはいかがでしょうか。

お話をうかがってニアンさんの今後の活躍にますます注目していきたくなりました。



 text © Mika Ogura 2020 


【プロフィール】

 小椋三嘉(おぐら・みか) 
 エッセイスト、食文化研究家。  
十数年のパリ暮らしを経て帰国。2008年にはフランス観光開発機構・ パリ観光会議局の名誉ある「プレス功労賞」を受賞。フランスのチョコレート愛好会「クラブ・デ・クロクール・ド・ショコラ」の会員。著書は『高級ショコラのすべて』、『チョコレートのソムリエになる』、『ショコラが大好き!』、『アラン・デュカス進化するシェフの饗宴』、『パリを歩いて―ミカのパリ案内―』など多数。


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