2019/05/21

【連載】小椋みか のごちそうさま
ポワソンダブリル




Poisson d’avril ポワソンダブリル
チョコレートの形をした魚


フランス・パリに滞在中の私の目の前に現れたのは、満面の笑みを浮かべた親しい友人でした。大きな包みをたずさえて、私がパリで宿泊していたホテルに訪ねてきてくれたのです。

その友人はパリで高品質のビーントゥバーチョコレートだけを扱う、こだわりのセレクトショップを経営していて、抱えていた包みは、フランスで “ポワソンダブリル (4月の魚)” と呼ばれる大きなチョコレートの魚でした。

思いがけず私の手元にやって来た魚は、カカオ感が高くて味わい深いダークチョコレートでできていて、中には魚介類や鐘型をしたさまざまな形のチョコレートと、ナッツ好きにはたまらない味わいのプラリネを詰めた卵型のチョコレートがぎっしりと詰まっていました。どちらもそれぞれダーク・ミルク・ホワイトの3種類のビーントゥバーチョコレートで作られたものです。


イースターとチョコレートの魚の意外な関係とは?

イースター(復活祭)が近づくとフランスの街角ではチョコレートの “ポワソンダブリル” をよく見かけるようになります。そもそもイースターのチョコレートはどうして魚の形をしているのでしょう? 友人によれば、その理由はキリストの復活と魚に関係があるからだなんだとか。

12使徒の中に漁師の兄弟がいて、不漁で苦しんでいるところに亡くなったはずのキリストが現れて、魚が獲れる場所を示しました。教示に従ってみると信じられないほどの大漁となり、兄弟はキリストの復活を確信したのでした。その後、兄弟はキリストから魚ではなく信者を集めるように導かれて使徒になったことから、市井ではイースターに魚の形をしたチョコレートを作るようになったそうです。

カトリック教徒が多いフランスでは、イースターとチョコレートは密接な関係にあることは知っていましたが、こうしたエピソードがあったのですね。ちなみにイースターは英語で、フランス語ではパック Pâques と言います。

それにしても色々な意味で、ほんとうに味わい深〜いチョコレートで嬉しいプレゼントでした。Merci ma chère amie ❤️


text © Mika Ogura 2019




【プロフィール】
小椋三嘉(おぐら・みか)
エッセイスト、食文化研究家。
十数年のパリ暮らしを経て帰国。2008年にはフランス観光開発機構・ パリ観光会議局の名誉ある「プレス功労賞」を受賞。フランスのチョコレート愛好会「クラブ・デ・クロクール・ド・ショコラ」の会員。著書は『高級ショコラのすべて』、『チョコレートのソムリエになる』、『ショコラが大好き!』、『アラン・デュカス進化するシェフの饗宴』、『パリを歩いて―ミカのパリ案内―』など多数。


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連載リスト
小椋みかのいただきもの


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