D'où vient le poisson d'avril ?
このポワソンダブリルはどこから来たの?
「ル・ショコラ・アラン・デュカス」のイースター用のサーディン型チョコレートを見て、フランスで出逢った魚を想い出しました。
南仏ヴァールにあるコランス村に滞在したときのことです。
村を散策していた時、後ろからつけられているような気配を感じて振り返って見ると、とても可愛らしい少女が二人、少し離れたところで笑みを浮かべて立っていました。私が歩き始めると彼女たちも歩き始め、私が立ち止まって振り返ると彼女たちも立ち止まって、ニカッと笑う。しばらくの間、その繰り返しが続きました。
振り返るたびに、少しずつ歩み寄っているので、日本人、あるいはアジア人を初めて目にして、興味があるのかと思って、私はとびきり愛想良く「ボンジュール」と声をかけたのですが、特に私と会話をしたいというのではなさそうでした。
やがて背後にふわりとした風圧を感じて、私が再び振り返ると彼女たちはちょっと離れたところにいて、キャッキャと笑いながら、今度はこっそり私の後ろからスマホで写真を撮り始めたのです。少女たちの意図が読めず、気にしないことにして歩き続けていたら、いつの間にか少女たちはいなくなっていました。
【画像 TOP】
BOÎTE DE SARDINES Chocolat Noir 75% & Lait 45% 110g
La Manufacture de Chococlat Alain Ducasse
«10 questions pour le chef Alain Ducasse »
ホテルに戻ると「背中に何かついているよ」と言いながら、夫が小さな短冊型の付箋を手渡してくれたのです。そこには一本線で描かれた小さな魚がいました。それは、ちょうど画像のような魚でした。絵を前にして、やっと二人の少女たちの思惑がわかり、軽く吹き出してしまいました。
そう、その日は4月1日、フランス語で「4月の魚 Poisson d'Avril(ポワソン・ダヴリル)」と呼ばれるエイプリルフールだったのです。
4月1日は誰かの背中に魚の絵を貼り付けるイタズラが許されていて、子供達は互いにどれだけ長く、魚が誰かの背中に貼り付けたままにできるかを競うのです。そのことを想い出して、先程の少女たちの嬉しそうな笑顔に合点がいきました。こんな心和むイタズラだったら、怒る人はほとんどいないことでしょう。
その魚はそのまま旅先のホテルの壁に居ついて、しばし私を楽しませてくれました。その「4月の魚 Poisson d'Avril」は、今でもとっても素敵な想い出となっています。
text © Mika Ogura 2024
【プロフィール】
小椋三嘉(おぐら・みか)
エッセイスト、食文化研究家。
十数年のパリ暮らしを経て帰国。2008年にはフランス観光開発機構・ パリ観光会議局の名誉ある「プレス功労賞」を受賞。フランスのチョコレート愛好会「クラブ・デ・クロクール・ド・ショコラ」の会員。著書は『高級ショコラのすべて』、『チョコレートのソムリエになる』、『ショコラが大好き!』、『アラン・デュカス進化するシェフの饗宴』、『パリを歩いて―ミカのパリ案内―』など多数。
♦ 【動画】
ちなみにご存知の方も多いことと思いますが、
高橋ユキヒロさんの音楽に同名タイトルで、
とても素敵な作品があります >>
Poisson D'Avril (1986) Opening
Yukihiro Takahashi 高橋ユキヒロ (高橋幸宏)
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